教えてくれたのは、茂貫太郎キャロウェイゴルフ マーケティング アジアプロダクトマネージャー。まずは、「JAWS RAWウェッジ」の概要から、あらためて語っていただきましょう。
「いちばんの特徴は、やはりなんといっても溝ですね。前作のJAWSウェッジも、37Vというルールぎりぎりの鋭い溝を導入していましたが、メッキをすると、せっかくの尖った溝がメッキの層によって少し丸みを帯びます。プロはその差を感じ取るため、ヘッド全体がノーメッキのタイプを使用するプレーヤーが多い状況でした。一方、アマチュアにとっては、ヘッド全体がノーメッキの場合、錆で手入れが大変だったり、見栄えが良くなかったりということが問題になってきます。そこで、『JAWS RAWウェッジ』では、フェース面のみをノーメッキにし、スピンを最大化しつつ、錆への懸念も可能な限り解消するようにしました」
フェース面にはマイクロフィーチャーも搭載されていますが、今回の「JAWS RAWウェッジ」では54~60度のロフトで採用され、斜めに配置されているところが前作(全番手に採用され、溝と平行に配置)と異なります。
「フルショットのときは、どちらかというと溝のほうがボールに作用します。一方、ヘッドスピードが遅くフェースにボールを乗せるようなときには、マイクロフィーチャーがボールに噛んでいきます。そのため、今回はロフトの多い番手に搭載しました。斜めの配置により、グリーン周りでフェースを開いたときには、ボールに対してマイクロフィーチャーが直角に近い角度で入っていきます。溝が噛み、さらにマイクロフィーチャーによって、プラスのスピンが入ることになります」
「JAWS RAWウェッジ」は、重心位置の調整方法も大きなポイントです。キャロウェイのウェッジでは初めて、タングステンが搭載されています。
「じつは今回、ロフトの大きいモデルでは、フェース面上の重心高を上げるために、バックフェース上部を厚くするだけでなく、ホーゼルも長くしています。しかし、ホーゼルが長くなれば、当然ながらネックに重さが寄ってしまい、重心がヒール寄りになってしまいます。そこで、『JAWS RAWウェッジ』ではトウ側のウェイトポートにタングステンを入れ、重心をセンターに近づけています」
ストレートなリーディングエッジの採用も、目新しい部分です。
「これまでのキャロウェイのウェッジは、少し丸みを帯びたリーディングエッジが多かったのですが、じつはここ最近、USPGAツアーのトレンドが変わってきていて、少しずつストレートなものが好まれるようになってきています。ジョン・ラームもその1人ですね。ターゲットに対しての構えやすさを優先しているということだと思います」
「JAWS RAWウェッジ」のソールにも、ツアープレーヤーからのフィードバックが反映されています。1つは、リーディングエッジ側の面取りです。
「これによって、地面に刺さらずにヘッドが入っていき、スッと抜けていきます。これまでも選手からの要望で、少し削って面取りを入れることがけっこうあったようです。アマチュアにも効果的だということで、今回のウェッジで導入されています」
ソールグラインドには、S、W、Xに加えて、今回新たにZグラインドが加えられました。ここにも、プロの考えが大きく影響しています。
「前作のJAWSウェッジでは、S、W、X、そしてWのローバンスがあって、Cグラインドというラインアップでしたが、今回のZグラインドは、WのローバンスとCグラインドを合体させたものになります。この2、3年、トウ・ヒールが少し削られたワイドソールで、バンスが少なめのタイプが求められるようになってきているんです」
茂貫マネージャーは、その理由として、アプローチの打ち方の変化を挙げます。
「以前は、スティープにヘッドを入れ、大きめのバンスで抜けを良くしていましたが、いまは入射角がややシャローになってきています。面取りのあるZグラインドであれば、地面に刺さることなく最初のバンスが入ってきて、うまくボールの下に潜り込み、その後、ワイドソールのさらに緩やかなバンスが滑ることで、ボールを拾うことができます。ターフもあまり取りません。そういう打ち方が主流になってきているんです。コースセッティングが厳しくなってきているなか、ドライバーやアイアンも含めて、やさしさ、ミスへの寛容さが求められているということでしょう。もちろんZグラインドは、トウ・ヒールが削られているので、ただやさしいだけでなく、フェースを開いてロブを打ってもしっかり抜けてくれます」
他の3つのグラインド、S、W、Xについても、いま一度解説していただきましょう。
「Sグラインドは、いちばんの万人向け、万能なグラインドとなります。そんなにアプローチに苦手意識がなく、構えたなりにシンプルにウェッジを打ちたい方にいいのではないでしょうか。Wは、どちらかといえばアプローチが苦手な方に向けたものとなっています。バンスが12度と多いので、バンカーが苦手という方や、ダフリのミスが多い人に良いと思います。Xはソール幅が狭く、バンスが多めで、トウ・ヒールが大きく削られています。少し上から打ち込むタイプで、アプローチのバリエーションをそれなりに持っている方にオススメです。ZとXは、比較的引き出しの多い上級者向けと言えるでしょう」
では、ロフト選びについては、どうでしょうか。茂貫マネージャーは、アイアンからの流れとプレースタイルがポイントだと言います。
「いまは、アイアンに組み込まれているPWにいろいろなロフトが出てきています。PWとAW、AWとSWとの間を同じロフト差にできればベストなのですが、PWのロフトがすごく小さいものもあり、AWとのギャップが開いてしまうところはしようがない部分もあると思います。そこをうまく埋められたとしても、今度は14本を超えないよう、上の番手を抜く必要が出てきたりします。その点では、ロングショットでスコアメイクしていきたいのか、グリーン周り重視でいくのか、人それぞれのプレースタイル、考え方ということになると思います。そのうえで、アマチュアはやはりシンプルに考えたほうが良いと思うので、キャリーを少なめにして転がして寄せていくイメージの50度や52度を1本、上げて寄せていくイメージのものとして56度や58度などを1本入れるというふうに考えたほうが、悩まないで良いのではないでしょうか」
選択の最後の要素としては、仕上げもあります。「JAWS RAWウェッジ」では、クロムとブラックの2種類となっていますが、どう考えるべきでしょうか。
「ブラックのほうが、より小さく見えるところはありますから、コンパクトなヘッドのアイアンを使っている人はブラックのほうがマッチするかもしれません。また、芝とのコントラストがはっきりしていることもあって、構えやすいと話す選手もいたりします。クロムは、光の反射が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回はフェース面全体がノーメッキなので心配する必要はありません。膨張色というわけではないですが、フェース面が大きく感じられるので、苦手意識がある方に合うとも言えます。ただ、どちらの性能も同じですし、取り立てて問題がないのでしたら、見た目や直感で自分が良いと思うほうを選んでいただいていいと思います」
最後に茂貫マネージャーに、個人的な意見も含めて、「JAWS RAWウェッジ」の素晴らしさを語ってもらいました。
「この37Vという溝は、本当にスピンがかかります。初めて前作のJAWSウェッジを打ったとき、スピンのかかり方があまりにすさまじくてびっくりしたのを覚えています。今回の『JAWS RAWウェッジ』では、そこにさらにノーメッキが加わっているので、まさにプロのパフォーマンスを簡単に味わえるウェッジになったと言えます。逆にスピンが入り過ぎて、慣れるのが大変という贅沢な悩みも感じたくらいです。また、面取りの効果も明らかでした。花道で、少し上から打ち込んでもスパーンと抜けて、突っかかりません。地面に刺さらないで、ボールがしっかりフェースに乗ってくれます。多くの方に、ぜひ一度、体感していただきたいですね」