メインの製品は、「APEX Ai200アイアン」と「APEX Ai300アイアン」の2機種となりますが、その詳細を見ていく前に、まずはAPEXの10年にわたる歩みを簡単に振り返っておきましょう。キャロウェイのプロダクト担当である石野翔太郎さんが、APEXの立ち位置と歴代モデルの流れを説明してくれました。
「X FORGEDアイアンは、どちらかといえば軟鉄のみの単一素材鍛造モデルというスタイルですが、APEXでは素材や構造でいかにパフォーマンスを高めるかということを考えつづけてきています。それは、過去モデルを順に見ていくと、よくわかります。初代の2014年APEXアイアンは、軟鉄鍛造のボディに、反発力の高いカーペンター455スチール製のフェースを採用。2016年モデルは、軟鉄鍛造ボディに360°フェースカップ。2019年モデルは、2016年と同様のフェースとボディに、タングステン・インナーウェイトとウレタン・マイクロスフィアも搭載。そして2021年モデルでは、AI設計のFLASHフェースカップが登場しています。たとえばアイアンで飛距離を出そうと思うと、かつてはロフトを立てるしか方法がありませんでしたが、そうするとアイアン本来のターゲットを狙っていくという部分ではデメリットも出てきます。APEXは、キャロウェイらしく新たなテクノロジーを盛り込むことで、そういった課題に挑みつづけてきたブランドということになります」
10年間根底に流れつつけてきたフィロソフィーは、もちろん最新モデルの「APEX Ai200アイアン」「APEX Ai300アイアン」にも受け継がれています。まず、構造は従来のキャビティとは異なり、いずれも中空となっていますが、石野さんいわく、「テクノロジーや異なる素材を盛り込んでいくとなると、やはり中空のほうがキャビティよりも分がありますし、プロ仕様のような見た目にこだわったという理由もあります」とのこと。ボディは軟鉄鍛造、フェースは素材が初代と同じカーペンター455スチールですが、今回はフェースカップを採用しており、さらにAPEXアイアンでは初めての鍛造フェースにもなっています。石野さんは、「2014年モデルと同じ素材というところが興味深いですよね」と指摘します。
「でも、初代はフェースカップではなくフェースプレートでした。フェースカップは、よりたわませることができるため、飛距離の優位性があるのですが、インパクトの衝撃も大きくなるので、耐久性を考えると2014年当時はフェースプレートにせざるを得なかったところがあります。一方、その後のモデルではフェースカップが採用されていますが、これらは反発性が少し小さい17-4ステンレスを素材として使っているんです」
「APEX Ai200アイアン」「APEX Ai300アイアン」が、カーペンター455スチール製のフェースカップを採用しているということは、その衝撃を受け止める良い方法が見つかったということでもあります。
「いちばんの要因は、バックフェース上部に設けられた凹んだ部分です。衝撃自体は初代よりも格段に上がっていますが、この窪んでいる構造がたわむことで柔らかさを発揮し、衝撃を受け止めることに成功しています。同じくカーペンター455スチール製フェースカップを採用していたモデルとしては、昨年のPARADYMアイアンもありますが、そのときはヘッド内部にJAILBREAKテクノロジーのような構造を設置して耐久性を高めていました。しかし、PARADYMアイアンの場合、この構造によってスピン量が少なくなるという面もあったんです。その点、『APEX Ai200アイアン』『APEX Ai300アイアン』は、凹んだ部分と軟鉄鍛造ボディの柔らかさで衝撃を受け止めているのでスピンが入りやすく、また今回はAiスマートフェースが導入されて、ここでもスピン量のアップが図られているので、よりピンポイントで狙っていけるアイアンになっています。実際、自分でも『APEX Ai200アイアン』『APEX Ai300アイアン』を打ってみましたが、アイアンらしい弾道でボールが上がり、キャリーがすごく出て、グリーンもしっかりキャッチしてくれる印象でしたね」(石野さん)
なお、「APEX Ai200アイアン」と「APEX Ai300アイアン」を比較すると、凹みの形状が少し異なりますが、これは、トップブレードの厚みの違い(「APEX Ai300アイアン」のほうが厚い)から来ているとのことです。
「トップブレードを厚くできると、衝撃もけっこう受け止めることができます。ただ、厚くしすぎるとデザインとしては悪くなります。今回のアイアンでは先ほども言ったように、見た目にも妥協をしたくなかったということで、それぞれのモデルのトップブレードの厚みに合わせて、ちょうど良い窪みにしているということになります」(石野さん)
もちろん、ボディとフェースがともに鍛造ということで、打感も申し分ないそうです。石野さんは、「両方を鍛造にすると、やはり打感がかなり違います」と言います。
「過去のAPEXアイアンのフェースは鋳造などでつくられていましたが、鋳造は一度、素材を溶かさなければいけません。それだけ熱が入ると、とても仕上がりが硬くなってしまいます。当然、鍛造もある程度は熱が入りますが、鋳造ほどではありません。実際に打ったときには、打感の柔らかさに本当にびっくりしました。一般的にフェースカップは弾き感が出るのですが、『APEX Ai200アイアン』『APEX Ai300アイアン』は違っていて、しっかりボールがフェースに食いつき、音も軟鉄鍛造のような雰囲気でした。また、内部にはウレタン・マイクロスフィアも搭載されていますので、余計な振動もしっかりと吸収してくれます」
「APEX Ai200アイアン」と「APEX Ai300アイアン」は、前作の位置づけになる2021年のAPEXアイアン、APEX DCBアイアン同様、ターゲットゴルファーが少し異なります。バックフェースはいずれも、APEX PROアイアンに似た、プロ仕様のモデルにも見えるデザインで、下部には重心位置を最適化する台形状のタングステンウェイトも同じく設置されていますが、「APEX Ai200アイアン」のほうが「APEX Ai300アイアン」よりもフェース長が少し短く、オフセットが少なめで、先述のようにトップブレードもより薄く、ソールも幅が小さいものになっています。
「構えたときの安心感は、『APEX Ai300アイアン』のほうが、かなり上ですね。また、どちらにもAiスマートフェースが導入されていますが、『APEX Ai200アイアン』はスコアが80~90くらいのゴルファー、『APEX Ai300アイアン』では90~100くらいのプレーヤーの打点分布やスイング傾向をインプットしてAIが設計しています。これから90台、80台とどんどんスキルを向上させていきたいという人には『APEX Ai200アイアン』、やさしさをより重視したいという人には、『APEX Ai300アイアン』がオススメです」(石野さん)
「APEX Ai200アイアン」と「APEX Ai300アイアン」は、9月6日から発売となります。なお、「APEX PERFORMANCE SERIES」にはもう1つ、「APEX Ti FUSIONアイアン」というモデルもキャロウェイのSELECTED STORE限定製品としてラインアップされています。