まず、「OPUS」という名前ですが、これは最高級ワインをつくるアメリカ・カリフォルニア州のワイナリー名を参考にしてつけられたそうです。キャロウェイのプロダクト担当、石野翔太郎さんは、「それだけ、最上級のウェッジができたという自信の表れです」と言います。
「キーポイントとしては、いつもの開発よりも時間をかけてつくってきたということがあります。とくにヘッドシェイプは、約19カ月前から試作を開始し、プロの意見を聞きながら何度もつくり直してきました。実際に製品となったのは、6回目の試作でできたシェイプ6と呼んでいる形状です。6回というのは、これまでと比べるとかなり多い試作回数です。じつは、このシェイプ6はJAWS RAWウェッジのバックフェースデザインのまま、かなり以前からツアーに投入されていて、多くのプロが気に入って使ってくれていました」
シェイプ6を示すS6の刻印が入った、JAWS RAWウェッジに見えるプロトタイプは、多くの勝利も重ねており、今年、ザンダー・シャウフェレが全米プロでメジャー初優勝を挙げたときや、笹生優花プロが2度目の全米女子オープン制覇を果たした際にもバッグに入っていました。では、シェイプ6とは実際のところ、どんな形状に仕上がっているのでしょうか。
「全体的にはティアドロップ型のやや丸みのあるシェイプです。リーディングエッジはストレートすぎず、丸すぎるものでもない、JAWS RAWウェッジとJAWS FORGEDウェッジの中間のようなラインで、トップブレードやトウ側の輪郭も、JAWS RAWウェッジよりラウンドしたものになっています。とくにリーディングエッジは、真っすぐすぎるものの場合、フェースを開いたときにターゲットとはまったく違う方向を向いているように見えるという声がプロからあり、程良く丸みのあるものにされました」(石野さん)
また、ネックからフェース面につながる部分も、従来とは異なる形状となっています。
「これまでのウェッジでは、この部分が窪んでいるように見えたようで、それによって、『ボールがつかまりすぎてしまうんじゃないか』とか、『フェースが左を向いている』と感じるプロもいました。その点、シェイプ6ではネックからフェース面にかけて滑らかにつながっているため、違和感なく構えることができます」(石野さん)
もちろん、「最上級」な部分は、シェイプだけではありません。スピン性能も格段に進化しています。大きな要因は、新しいパッケージとなった溝にあります。
「2010年にできた新溝ルールでは、溝の角の規定だけでなく、体積とピッチに関する項目もありました。たとえば溝の幅を広げて体積を大きくする場合、それに合わせてピッチも広げなければいけないというもので、逆にピッチを狭めて溝の本数を増やす場合は、溝の幅も狭めなければいけません。キャロウェイの溝は、角が鋭い一方で角度は大きめの37Vであり、この溝の幅を狭めるとどんどん溝が浅くなって体積が減るため、これまでは、とくにバンカーやラフからのショットで砂や芝が入り込みにくくなり、スピン性能が落ちると考えられていました。しかし、今回さまざまなテストをした結果、幅が狭く体積が小さい溝でも、本数が増えれば、むしろそういった厳しいライでスピンが入ることがわかったんです。この結果を受けて、『OPUS』の溝は従来よりも2本増加しています。また、溝と溝の間にはもはやお馴染みのマイクロフィーチャーも搭載されています」(石野さん)
加えて、重心位置の変化も見逃せないポイントだと、石野さんは続けます。
「今回は、ほんの少しですがネックが長くなり、バンスの裏側からは、ウェイトポートに入れていたタングステンがなくなっています。これらにより、わずかに重心が高くなったことも、スピン量の増加に貢献しています」
スピンの増加は、アプローチショットの弾道にも変化をもたらしています。プロからは、「ウェッジの理想の弾道」と絶賛する声が上がっているそうです。
「みなさん、球が低く出ると言ってくれていて、PGAツアーの選手たちも、『まず、弾道が良い』と話しているそうです。スピンがしっかり入った低い球で、なおかつ滞空時間が長いゆっくりとした飛び方をするんです。プロはそういった弾道を求めています。たとえば、ゴミ箱にものを投げるとき、誰でも低く投げるじゃないですか。わざわざ高い放物線では投げません。ダーツもそうですよね。高く投げるほうが難しいです。グリーン周りでも、なるべく低くコントロールされたボールを出したいわけです」(石野さん)
先述のように、今回のシリーズでは、「OPUSウェッジ」と「OPUS PLATINUMウェッジ」という2種類のラインアップとなっていますが、その違いにも触れておきましょう。ヘッドシェイプや溝の処理は同じですが、大きく異なるのは製法とテクノロジーです。「OPUSウェッジ」が軟鉄鋳造であるのに対し、「OPUS PLATINUMウェッジ」は、MIM製法とCNC加工という特殊な方法が採られており、さらにバックフェースの上部には、タングステン製のバーが装着されています。「ウェッジに、キャロウェイらしくテクノロジーを入れたらどうなるか? ということを形にしたのが、『OPUS PLATINUMウェッジ』であり、位置づけとしてはハイグレードモデルということになります」と、石野さんは説明します。
「重心を上げると、ギア効果によって、よりスピンが入りやすくなるということで、『バックフェースのいちばん上にタングステンのバーを搭載すればいいじゃないか』という話になったのですが、これを精密に設置する方法も、同時に考えなければいけませんでした。辿り着いた答えが、MIM製法でした。粉末状にした金属と樹脂製の接着剤を混ぜ、型に入れて固める方法で、出来上がったものをCNC加工で削り出して完成形にしていきます。これにより、タングステンバーを設置するポケットも精巧につくれており、違和感なくバーを装着できています。また、CNC加工でできたミーリングの跡をあえて残しているので、バックフェースがとても美しい仕上がりになっているのも特徴と言えます」
「OPUSウェッジ」のロフトが、48度から60度まで2度刻みの計7種類となっているのに対し、「OPUS PLATINUMウェッジ」が、54度から60度までの4種類だけであるのも、タングステンバーが関係しています。
「スピンが入りやすくなるということで、そこに特化させるならば、やはりサンドウェッジとロブウェッジが向いているということになります。それよりも少ないロフトで、スピンを増やす必要性はあまりありませんから」(石野さん)
では、「OPUSウェッジ」と「OPUS PLATINUMウェッジ」を実際に打ってみると、フィーリングなどに違いはあるのでしょうか。すでに両方を試している石野さんの感想は、「それぞれに、明らかに異なる打感の良さがあります」というものでした。
「『OPUSウェッジ』は、すごくボールの食いつきが良くて、柔らかさがあり、音も良いです。一方、『OPUS PLATINUMウェッジ』は、メインの素材である303ステンレスらしい食いつき感があります。303ステンレスは、パターでもよく使われている素材です。前にも言ったように、粉末状にして固めたものをCNCで削り出しているため、鋳造よりも熱処理が入っていませんから、303ステンレス本来の柔らかさが純粋に伝わってくるのでしょう」
「OPUSウェッジ」は、S、W、Cグラインドに加えて、Cグラインドのバンス角をさらに抑えたような形状の新しいTグラインドも用意し、仕上げはクロムとブラックの2種類。CALLAWAY SELECTED STORE限定の「OPUS PLATINUMウェッジ」のグラインドはSとZで、仕上げはクロムとネイビーブルーです。